日本学術振興会人文・社会科学振興プロジェクト |
第1領域日本的知的資産の活用研究プロジェクト
「日本文化の空間学」「日本型地域ネットワークと地域通貨」 |
速報
石巻教育委員会北上教育所長 武山文衛(ぶんえい)さまがコーディネートしてくださって契約講の聞き取り調査をしました。
速報メモを載せておきます
【日時場所】: 2006年7月21日(金)19.30- 石巻市北上町総合庁舎北上教育事務所 和室
【出席者】:
北上町側
写真左から、石巻市教育委員会北上事務所長武山文衛先生、長尾部落 嶋津修さま(埼玉からUターン)、武山勝一さま、「契約構(ママ)中掟覚帳(弘化3年2月より)」の行人前(ぎょうにんまえ)から武山萬さま(行政マン)
日本学術振興会人文・社会科学振興プロジェクト研究側
「日本型地域ネットワークと地域通貨」研究グループ グループ長 岡田真美子(兵庫県立大学環境人間学部教授・環境宗教学)合田博子(同教授・文化人類学)古賀弘一(同大学院博士後期課程、兵庫県西播磨県民局嘱託)藤田益伸(社会福祉法人尚紫会)
■長尾、行人前の契約講の実勢
講員の数は長尾64,5戸 行人前は12軒(入っていないのが2軒) 数は増減あり
契約講に応分の負担を出して新加入した例もある 15,6年前にはあった。
長尾には契約講に入っていない人が15,6軒ある
■ 契約講と財産
長尾は54軒個人名が貼って登記してある。戦後共有地で登記
もともと放牧地かったところを建設省からお金を払って占有権を得て、葦を熊谷産業へ売って行人前の契約講の財産になった
戦前の契約講は財産を管理する講ではなく、地域経営のための戸主講であった。
◎ このことが明らかになったが今回のワークショップの最大の成果であったと思われる。
■ 契約講の役目
縁類(血縁) 親類(親しい類、どこかの時点で義兄弟分を結ぶ。本家は血のつながりはない。葬式講、結い講、)
肝入=宿前(行人前) 宿前の壁隣が「叮前」 長尾は契約講を上がった人が宮総代→寺総代
− 葬式は親類がしきる [※葬式講(組)にあたる。岡田の住む長船町も葬式において血縁者ではなく講組がした]
地取 土葬を掘る人 契約で決める 陸尺(ろくしゃく):旗持ち
移動契約 宿前がたいへんなので今は料理屋へゆく。長尾は3つに分かれる
昔は前の晩から戸主が肴の用意をした。 膳椀を貸してその費用は契約の収入になった
■ 契約講の寄合
春祈祷 初午のひぶせは契約で決める (秋葉) 新築した人が担当
祭り 部落の神社(村社) 親類単位で氏神の講
■ 今日の契約講
契約講メンバのほかに新住民が増えて、村の共同作業が問題になってきている
月浜、追波は山・財産を切り離して契約講でもち、地域行政は自治会方式になっている。
今後さまざまなスタイルが生まれるだろう。
【見せていただいた資料】
・大蔵流の謡の本 契約講は謡三番 (長尾は大蔵流)で終わる
・片倉子十郎知行桃生郡指浦村成田村女川(おながわ)村 皿貝(さらがい)村の内『風土記御用書上』
これで北上町へのフィールドワークも3回目となりました。一度目は昨年9月に行われた日本学術振興会人社プロジェクトの仙台シンポジウムに伴うもの、2度目は観音講(嫁講)取材、そして、このたびの契約講(戸主講)取材でした。今回取材に応じてくださった2つの部落の世話人、武山萬様、武山勝一さま、嶋津修さまに感謝いたします。長観寺住職小松孝一方丈様、奥様ら北上の方々のホスピタリティはおとづれるたびに心地よさを増し、その人々の心の豊かさと、地域の山と川と海の豊かさとあいまって、また「地域の宝調査」に訪れたい、という気持ちが強くなる場所になりました。なお、このフィールドワークは3度とも、取材先の選定から交渉、当日の調査実施のマネジメントまですべて石巻市教育委員会北上事務所長 武山文衛先生の御世話になりました。綿密なご調整と温かい御こころ配りに対し、心よりお礼申しあげます。また石巻市北上総合庁舎の職員の方々にもご厄介になりました。改めて感謝して記しておきたいと思います。
日本型地域ネットワークと地域通貨研究グループ
岡田真美子 合田博子 古賀弘一 藤田益伸
2006年7月22日(土)神割崎、荒嶋神社(あれしま)、鹿島御子神社 フィールドワーク
(c)2005 Prof. Dr. OKADA Mamiko 引用されるときは必ず出典明示してください |
岡田真美子 2006年07月24日 9:46:31更新