1999年1月3日発足。毎週日曜登場予定です。
第42回 1999.11.23 「いのちの輝き」
研究以外にeventをまだ2つ抱えて、なんともスリリングな日程をこなしています。
人間 寡黙になるものですね。じっと自分の中で暖めたくなって...ごめんなさい
秋の愛生園を訪ねました。瀬戸内の美しい海に浮かぶ長島に立てられた国立のハンセン病療養施設です。《強制的に 法の力で 世の中から隔離された気の毒な人々》― フィールドワークにお邪魔するまでは、そんなイメージがありました。初夏に第1回フィールドワークを行なった時には、一同 義憤に燃えて 園に向ったものです。
ところが、突然に目の前に通りかかった愛生者の方々は、とにかく明るくて、優しくて、「あっ」と気付いた時には、暖かな空気をわたくしたちの周りに残して通り過ぎて行ってしまわれたのでした。
帰りには、「励まされたね」「勇気を貰ったね」という気持ちになって、「われわれは一体何をしに来たのだろう???」と話し合いました。
第1回の成果が小さな伝統となって、第2回はもう少し突っ込んだ問題意識をもって愛生園を訪ねました。しかし、またもわれわれは 愛生者の方々から、大きな戴き物をして帰ってきてしまいました。いつも戴いてばかりです。
与えることのできる人は豊かです。豊かさとは、たくさんのモノを持っていることではありません。多くを他に与えられることです。
われわれの会った愛生者の方々は本当に豊かな人々でした。わたくしたちがその方々に与えることのできたものは...そうですね、「こんにちは!」という元気な挨拶と、笑顔、それだけしかありませんでした。
☆10ヶ月の赤ん坊をお家において 家族の幸せを祈って進んで愛生園に入られた双見女史は、たくさんの「園の子供」をお持ちになりました。賢母、そんな言葉がぴったり。その知性の輝きの眩しかったこと。☆看護婦さんになりたかったけど叶わなかった野崎夫人は、喜んで愛生園の介護者となられました。その経験のお蔭で義母義父の老後をみとってやれたのが私の幸せです、とお話し下さいました。
『「ありがとう」そう言われた時が一番嬉しい』そうおっしゃったときのあの笑顔の美しさを忘れることができません。
☆いつもお世話になる副園長の中井栄一博士。その学識の深さ、ものの見方の公正さ、淡々とした しかし 生半可ではないヒューマニズム、尊敬の念は深くなるばかりです。
患者さんだけではありません。職員の方々、その皆が「愛生者」だそうです。いきることを愛しているこれらの人々から、栄眞は、ひとはいくつもの「生Leben」を生きることができるものだ と教えて頂きました。
そんな「いのちの輝き」に包まれて愛生園から帰ってきました。月並みな言葉ですが、「ああ、いきる ということは なんとありがたいことか」と思いました。その夜、「この貴重ないのちの残りの半分をわたくしの愛する人のためにお使い下さい」と祈りました。(またも誰に祈ったのだろう?)sachlichな報告書には書けなかった感動。皆さんにお伝えできないのがもどかしいです。そう、なんでしたら、今度ご一緒に参りましょう。来年の初夏にもまた愛生園をおたずねするつもりです。
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