栄眞尼の
電子説法室

第13回
『自殺志願のガリ/デブ女史たちへ』
 1999.04.04

               「もしもし」 聞きなれた低い声。まだ7時じゃない。どうしたんだろう。

               「めちゃくちゃ食べてるんです」 ああ、彼女、また悪くなっちゃったんだ。

               「もう死のうかと思って電話しました」 そう簡単に言うなよ。



彼女は拒過食を繰り返しています。電気釜いっぱいのご飯を一度に食べたり、おぜんの上いっぱいに空き袋が広がるほどスナック菓子を食べているかと思うと、がりがりになって青い顔をしている。

がりがりで食べられない時、彼女はご機嫌です。自分に勝っている、と満足なのだそうです。しかし、それは長くは続かない。それが身体に悪いことを知っているので、やがて彼女は情緒不安定になるのです。そんなことしていると、カルシウム不足で骨はぼろぼろになるし、生理は止まるし。

少し食べ出すと、今度は止まらなくなります。自分に負けた、と彼女はがっくり来ます。外へ出るのもいやなのに、コンビニへは行ってしまう。買っただけ全部食べるので、怖くて、一回分食べるだけしか買わないのだと言ってました。



彼女と会って今年で4年目。もう住んでるところも遠く離れているので力にはなれないといったのですが、ときどき思い出したように「死ぬ」と言ってきます。

とても辛いことですが、栄眞はこれ以上 力になってあげることができません。泳ぎを知らぬ人間が溺者を助けようとすると、溺者を殺してしまうことがある。彼女の病気を実感できないわたくしには、彼女を救うことができないのです。



母子関係が原因である、とよく言われます。しかし、父親も無関係ではないらしい。家族関係が重要な要因を成していることは確かなようではあるのだけれど。

とはいえ、やはりこれは病気です。心の病というものは、脳のメカニズムが失調しておこると栄眞は考えています。心は脳の働きだ、機能だ、心という器官はない、と繰り返し栄眞が言うのはそのためです。心の手当てのためには、単なる精神主義だけでは間に合わないのです。

自閉症がそうであったように、また、多動児がそうであるように、これらの病は心の持ちよう、愛情の掛けよう、などという問題ではありません。(気をしっかり持っていても、インフルエンザには罹るし、骨折もするではありませんか。) それがわからず、どれほど多くの母親達が言われなき非難を浴びたことでしょう。

残念ながら、この拒過食症に付いては、まだ充分医学的な解明がなされているとは言い難い。精神科医の皆さん、早く彼女たちを救う道を見つけて下さい。



摂食障害は圧倒的に女性に多い病気です。女性の満腹中枢(腹側内核)が性中枢でもあるせいでしょうか。(男性は満腹中枢とは別に背側に性の中枢があります。)

親子代々拒過食を繰り返しているというケースも多いようです。過食をした時、彼女たちはある指を喉につっこんで、食べたものをみずから吐き出します。歯と擦れて、その指には「吐きダコ」ができる。過食症になったある日、母の指にも同じ「吐きダコ」があるのを見つけて呆然とした、という話も聞きました。



彼女たちはどうしたらよいのでしょう。 為す術もないのでしょうか?

いえ、栄眞はひとつだけ、有効な手はあると思っています。それは「自助グループ」です。場合によっては充分な知識と理解を持ったお医者さまがついてらっしゃることもあるようです。

ねえ、死ぬなんて簡単に言わないで、その前に門を叩いてみましょうよ。「叩けよ、さらば開かれん」 その門をくぐってよくなった人はたくさんいる。



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