栄眞尼の
電子説法室
 

第16回
『ひとりの人の悲しみを減らすこと』
 1999.05.02

あなたに喜ばれるためにだけ鳴く
 
かくもやさしい歌をお聞き下さい
 
苔にゆらめく朝露のように
 
つつましく軽やかなその声を
...................................................................
 
ひとりの人の悲しみを減らすこと
 
これ以上素晴らしい業はないのです
 
(ヴェルレーヌ 『英知』)


 栄眞が中学生だった頃、大学には紛争の嵐が吹き荒れていました。学生達は自分

 達が 世界を変えることができると信じているかのようでした。

 人が世界を変えるですって? わたくしたちにそんな力があるのでしょうか。 生 言っ

 ちゃいけないよ。それは幻想ってものだ。
 

 栄眞は大学の授業で 高名な『空想より科学へ』を読みました。苦労してドイツ語を読

 んで その内容の貧弱さに呆れたことを覚えています。それは『空想より空想へ』と名

 づけた方がふさわしい本でした。

 
 わたくしは、世の中を劇的に変えること −革命−を好みません。それは暴力だから

 です。 全てのものを いちどきに幸せにすることなどできるとは思えません。

 一時「ポア」などという恐ろしいトリックを用いて、自分達の革命を推進しようとした

 人々がいたのを覚えてらっしゃいますか。そうすることが世界の幸せであると彼らは

 本気で信じていたのでしょうね。これは信仰などではない、「狂信」です。
 

 栄眞は 「世界の幸せ」なんて責任もてません。大切な たったひとりの人の悲しみを

 減らすこと ― それがどれほど大変なことか、わたくしはよく知っています。自分の隣

 にいる大切なひと、その人の喜びのために歌い、その人の悲しみを減らすこと、―

 その何と困難なこと。

 
  しかし、それのできない者に 環境を愛することなどできるはずがないではありませ

 んか。わたくしは だからまず 隣にいる大切な人を心から愛することからはじめたい。
 

 それをあなたはエゴだとお呼びになりますか? 全ての人を愛すると言いながら、実

 は誰も愛さぬ偽善者になるよりは、栄眞は ひとりの人を愛するエゴイストになるほ

 うがましだと思うのですが。


 【参考文献】 モーリス・ズンデル『内なる福音』(女子パウロ会 1994  \1200)

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  okadamk@hept.himeji-tech.ac.jp          姫路工業大学環境人間学部   書写キャンパス
 
 
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