(2000.0102更新)
 栄眞尼の
電子説法室

1999年1月3日発足。毎週日曜登場予定です。

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第46回 2000.01.09
「事あれかし」

先月の日記にStuart Kaufman の下の言葉を書いたところ、
反対意見を戴きました。もう少し説明してみたいとおもいます。

For most cells equilibrium corresponds to death.

「殆どの細胞にとっては平衡状態は死を意味する。」

(Kaufman, At Home in the Universe , p.21)*

「生物は平衡状態を保つために、絶えず努力をしているのではありませんか?」
そういうお便りを頂きました。わたくしの書き方が足りなかったようですね。

Kauffman は、生物は非平衡状態にある、と述べています。

生物と言うものは、複雑な化学物質のシステムとして活気にあふれる存在である細胞からなり、持続的に物質代謝を行なっているからです。

<平衡状態>というのは <恒常性>のことではない、ということを言うべきでした。

恒常性(ホメオスタシス)というのは、絶えず安定であろうと調節した結果保たれている安定性です。

だから、じっとしていて、全然変わらない状態ではないのです。



わたくしがあのカウフマンの言葉を書いたのは、我々はなにもない平穏な日々を欲するけれど、それでいいのだろうか、と考えたからでした。

いろいろゴタゴタあるのは確かにくたびれる。それで、事が無いように、と願うのですね。

しかし、ゴタゴタあって揺れていることこそ、生きているということなのではないのでしょうか?

そこで一生懸命ふんばって、新しい次のステージを迎えるのは誠に生物の生き方として理に適っている。

だから、立花 隆がかつて言ったことば「事あれかし!」に栄眞は共感するのです。

栄眞は 事が起こることを おそれずにいたい。それは あたらしいものを生む前兆だから。

むしろ、なにも起こらぬ、脳波がまっ平らになったような平衡状態は、死に等しい、そう思ったのでした。

どうでしょう、ご理解いただけたでしょうか?


*The Search for Laws of Self-Organization and Complexity,
Oxford University Press, 1995

『自己組織化と進化の論理 宇宙を貫く複雑系の法則』 (日本経済新聞社 1999.9)  \2500


注)このページの壁紙gif.は、小学生の広大くんが一生懸命作ったのを貰ったものです。
    広大くん、ありがとう。          http://www2.memenet.or.jp/~koudai

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Copyright(C) 2000 Prof. Dr. OKADA Mamiko
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