人文・社会科学振興のためのプロジェクト研究事業
「日本型地域ネットワークと地域通貨」研究班
(2005.03.25更新)
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日本学術振興会
人文・社会科学振興のためのプロジェクト研究事業

平和構築とグローバル・ガバナンス 

Peace Building and Global Governance

2005年3月25日(金)13.00−18.30
2005年3月26日(土) 9.30−17.05

場所 ホテルラフォーレ東京「御殿山ホール


■趣旨(日本学術振興会HPより): 

近年、平和構築をグローバル・ガバナンスの重要課題とする考え方が急浮上しつつあります。世界各地におけるさまざまな内戦とテロリズムの発生は、国家機能の低下や崩壊を示し、権力の空白、人権の侵害などの現象を伴ってきました。

そのような状況に対して、各々の現場で平和構築が試みられるとともに、その影響が国境をはるか越えた地域にまで及ぶなどといった事情を背景に、国際社会によるさまざまな形態の介入をテコにした国家建設や自立への関与も平和構築の内容となっています。

しかし、そうした平和構築の活動をめぐる議論は、「国際社会」という概念そのものの脆弱性と多義性を映し出すものともなっているのです。また、ジェノサイドや内戦は歴史的にも繰り返されてきており、その背景の複雑性・多様性はわれわれにその防止戦略の難しさを教えています。

以上のことから、実務の現場と歴史学、地域研究、法学・政治学などのさまざまな研究とを結び、第一線で活躍する関係者・研究者を国内外より招き、平和構築とグローバル・ガバナンスについて考えるシンポジウムを開催することとしました。

■ プログラム

平成17年3月25日(金)午後

13:00〜 開会挨拶 : 日本学術振興会理事長/池端 雪浦 事業委員会委員長

13:10〜 シンポジウム趣旨説明 : 城山英明企画委員会主査

13:30〜 基調講演(各セッションの海外研究者3名×30分)

セッションI : Prof. Eric Stover(University of California, Berkeley)
セッションII : Mr. Oren Yiftachel(Ben Gurion University of Negev)
セッションIII : Prof. John Braithwaite(Australian National University)
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15:30〜 セッションI : 紛争の歴史に学ぶ―比較史的考察

◇コーディネータ:石田勇治(東京大学)

◇パネリスト:
Prof. Eric Stover (University of California, Berkely)
Dr. Juergen Zimmerer (Universitaet Duisburg-Essen)
廣瀬 陽子(慶應義塾大学専任講師)
武内 進一(アジア経済研究所グループ長代理)
清水 明子(東京大学講師)
西 芳実(東京大学助手)
狐崎 知己(専修大学教授)

世界のさまざまな地域における過去と現在の集団殺害や「民族浄化」などを対象とする比較ジェノサイド研究の成果をもとに、紛争のメカニズムと、事後の債権や和解に向かう社会の動態分析を試みる。その際、紛争で生じる加害者と被害者の関係がけっして固定的なものではなく、被害者が次には加害者になる現象(置換性)がしばしばおきることに留意しつつ、歴史的経験の示唆するところを明らかにし、紛争の防止に活用する方策について考えます。
Hence, a dynamic analysisi wil be attempted of both conflict and of reconstruction and reconciliation in post-conflict society.This analysis will be made based on the results of comparative genocide research covering a wide range of past and present incidents of genocide in various regions of the world. The relationship between the victims and victimizers in such cases is definitely not a fixed one; as the two may often trade places. Elucidating what this historical experience suggests, ways wil be sought for pursuing conflict prevention.
★狐崎先生の「genocideがおこって初めてマヤ人という意識が生まれた。それまでは何々村のだれそれだった」「genocideのあとは被害者の共同体ができてしまう。これらの人の願いは「復讐したい」というものになる。」「犠牲者の心を癒すことが大切」という言葉が印象的でした。
18.45〜レセプション

平成17年3月26日(土)終日 050326peace

09:30〜 セッションII : 平和構築の現場から―現場の多様な経験知 

◇コーディネータ 黒木 英充(東京外国語大学助教授)
◇パネリスト
Prof. Oren Yiftachel(Ben Gurion University of Negev)
Mr. Datu Michael Mastura (Politician, Mindanao, Philippine)
Mr. Hiroto Fujiwara (International Criminal Tribunal for the former Yugoslavia)
松野 明久(大阪外国語大学教授)
伊勢崎賢治(立教大学教授) 
世界のさまざまな地域の現場の多様な平和構築の試みについての経験知を共有することを試みる。パネリストは、さまざまな地域(アジア、アフリカ、中東など)においてあるいはさまざまな手法(和解の支援、真実究明委員会、国際掲示手続き)を通して平和構築の現場に携わった実務家、あるいはその現場を直接観察対象とする研究者。そうした経験を通して、どのような相互学習の可能性があるのか、平和構築のあるべき姿とは何なのか考える。
In this area, experiences in peace building will be shared by people working on the ground in various regions. The participants will hail from such regions as Asia, Africa, Latin America, and Central Asia and be practitioners with on-the-ground experience in peace building through a variety of means(e.g., support for reconciliation, demobilization, medical and psychological care, post-conflict development such as in areas of employment and education). Carnering insights from these various experience, possibilities for launching an integrated study will be explored.
  ★ 松野先生の報告の中に真実究明委員会(CAVR)に関する興味深い活動紹介があった。
地域から排除された加害者が委員会に申し出る。地域に対して謝罪し、再び地域に受け入れてもらう。話し合いが行われ、許しの儀式が行われる。最後には共食して終わる。
Mamiko:日本では村八分の解消はどのような手続きを経て行われたのだろうか?
12:30〜 ポスターセッション同時開催

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14:00〜 セッションIII : 平和構築のシステムを探る- 制度的・理念的考察

◇コーディネータ:遠藤 乾(北海道大学助教授)
◇パネリスト
Prof. John Braithwaite(Australian National University)
Judge Erkki Kourula, International Criminal Court
Mrs. Fiona Mckay, International Criminal Court
Mr. Uwe Ewald, MaxPlank Institute for Foreign and International Criminal Law
篠田英朗(広島大学平和科学研究センター)
寺谷広司(東京大学)
古矢 旬(北海道大学)
平和構築のグローバルなシステムについて包括的に考察する。具体的には、一貫した責任ある介入を思考するシステムを求めるべきなのか、修復的司法のようなここの状況に応じたアドホックな和解を思考するシステムを求めるべきなのかが、ひとつの争点となる。また平和構築における諸アクターたとえば米国のような大国、国際刑事裁判所のような国際機構、あるいは国際NGOなどの役割とその限界に関する分析を行う。あわせて、歴史的・思想的にこれらの問題がどう捉えられるのかについて考える

17:00〜 閉会挨拶 : 石井 紫郎 学術システム研究センター副所長 平成17年3月25日(日)


今回拾ったキーワード

conflict , reconciliation , beyond the headline, on-the-ground , practitioners, tradisional & modern justice


参加しての感想:

参加するまえには平和構築、人間の安全保障、ジェノサイドなどという問題は自分とはすこし遠い課題であると考えていました。

確かにスケールは大きいし、舞台もチモール、パレスチナ、ルアンダ、その他広い世界をまたに駆けた討論で、気後れを感じました。 長沢美沙子さん

しかし、現場(on-the-ground)の話を聞いている内にそれらの問題は、わたくしたちの地域で起こっているさまざまなconflictとパラレルであり、また自らの身近な日常的な人間的なトラブルとフラクタルであることに気づきました。 平和構築とは、conflictなしの関係性を築くことにほかならないと感じました。そのために有効な人的ネットワークの構築法は?と問うときには、わたくしたちの地域ネットワークのあり方研究の課題もなります。

post-conflictにおいて重要なことは、被害者の心を癒すことと、無念を晴らす、名誉を回復することが大切であるということがセッションで述べられていました。 一旦人の集団から排除された人々(victim)の再integrierenというのも取り組み甲斐のある課題です。

なお、peaceとjusticeは両立しない、という伊勢崎賢治先生の言葉は衝撃的でした。 ある集団のjusticeは別の存在にとっては非justiceであるという状況は必ず起こり、そこにconflictが生ずる可能性が高いのですね。 学振の鈴木さん、未来工学研究所の緒方さん、立命大のサトウさんと再会してお話うかがえて愉快でした。また会場でお知り合いになった今回のシンポ功労者のお一人長沢美沙子さん(写真右)には大変共感するところが多かったです。すてきに柔らかな脳の持ち主に会えるのが、人社プロの醍醐味だと改めて感じました。(桑子プロジェクト コア研究者 岡田真美子)


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