「たしかに今日は取るに足りない日だったかもしれない。しかし、昨日も同様にそうだったし、ひるがえって、明日にたくすだけの希望があるようにも、思えなかった。それならば、取るに足らない今日を最高にみすぼらしく生きるしかないじゃないか。そしてそれは、そこまで悪いことでもないのだ。ただひとつの僕に出来ることなのだ。いまこの瞬間そうまさにこの瞬間、取るに足らない僕は取るに足らない世界のまん中でこうして生き永らえているのだ。僕の目の中になだれこんでくるのはただの光だ。しかし、希望に満ちた光だ。次々とくるまがやって来ては、僕の顔面に光を投げた。僕はひかりの中に立っていた。再びギターのリフレインが聞こえ、ベースとドラムが重なった。ああそうだ誰がなんと言おうと今日は最高の日だ。行き交うくるまのひかりに包まれて最高なんだ。それだけのことなんだ。
僕はまばゆい光の中でまばたきもせず、人生で最高の日が僕をおおいつくすのを見つめていた。」
(岡田文弘『まちの小説』より)
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『夢遊という散策』
処女長編『まちの小説』以降に書かれた小説(2004〜2006年)を網羅した決定版作品集。
第二長編「夢遊という散策」を完全収録。
収録作品
夢遊という散策(完全版)
びんぼう神
銀色フルート
おばけ煙突
白ネギとアゲの味噌汁
フール・オン・ザ・ヒル
しんしん記
自殺志願
キマイラに関する三つの解釈
ESCHATON〜僕は約束の場所で傷つき続ける#再会の日が来るその時まで
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『夜更けの夢言劇』
2008年脱稿の連作短編集。
サウンド・トラックCD付。
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