めがね供養祭祈願文  

ここに恭しく仏祖三宝の御前に於て、内外を厳浄し、香華等を厳備し、一会の大衆とともにめがね供養祭の法会を修し奉る。仰ぎ願わくば、上来勧請の諸尊、伏して照鑑を垂れたまえ。

 それ惟るに、物を慈しみ、恩を布き、惻隠の情を致すは、これ聖賢の要道なり。況や、我らが五根のうち、重要なる眼根を補助し、世界を照見するに資するところのめがね、甚だ大なるの功徳を有せり。時移りて、その役を一度終えしも、捨て去るに忍びなしとの念あるなり。

そもそもスリランカは「吉祥なるランカー島」の意にして、わが日本と同じく、ゴータマ・ブッダの法灯即ちダンマ・ディーパ、を今に伝う仏教の栄えし美しき国なり。かの地の人々、仏陀の説きたまいし布施行を現代に示現し、長きに渡り、我が国にあまたの角膜を提供さる。われらが感謝の念、絶えることなし。

 然ある時、去る二〇〇四年十二月二十六日、インド洋大津波の襲来を受けしスリランカは、未曾有の災害を受く。その惨状は記憶に新しきところなり。

思うに今こそ、災害より復興の道なかばにある、かの国の人々に報恩の誠を捧げる時なり。かくして、NPO千姫プロジェクトは、スリランカとの縁ある「国際交流ならふれあいの会」と協働し、スリランカ復興協力のため、かの地に不足せしめがねの提供を呼びかけたるところ、ありがたきかな、遠近のあまたの篤志家より、自らのあるいはゆかりの人の愛用せしめがね・レンズが陸続と寄せられ、その数、短期間に優に四千を越ゆ。また赤穂の有志のごとく一結して奇特の試みを興すものあり。

今ここに寄贈者各々の真情を思い、ひとたびは、その任を全うせしめがねに対し、報恩の心念を捧ぐ供養祭を厳修す。あわせて、インド洋のかなたスリランカの地において、かの地の人の眼根を助け、あらたなる役目を果たさん事を念願するものなり。

往昔、ブッダの説法を聴聞せし弟子がさとりをひらきし時、経典にいわく「法の眼を得たり」と。めがねの布施を通して、いままさに慈悲のネットが生まれんとす。この網は、まさに法の眼によって、明らかに見られるものなり。

 伏して祈らくは、上来、鳩る所の功徳をもって、「スリランカ復興協力めがねプロジェクト」が滞りなく円満成就するを願うものなり。あわせて当プロジェクトに協力・復興協力せし一切の善男子、善女人をして決定不虚の利益を得て、勝妙の楽を受けんことを祈る。

 願以此功徳 普及於一切 我等与衆生 皆倶成仏道

此れ時、平成十七年十一月二十四日、 
     教意山妙興寺 慈音院日行、謹んで申す


(c)2005 Rev. Dr. OKADA Yukihiro